コラム

“自立”は孤立じゃない——障がい者支援スタッフが語る、本人らしさと協働で拓くこれからの自立支援

なぜ私は障がい者支援の現場で“自立支援”にこだわるのか?

なぜ私が障がい者支援の現場で「自立支援」にこだわるのか。

それは、目の前の人の「できる・できない」を評価するためではなく、その人の人生の「編集権」を取り戻す営みだと信じているからです。

自立とは、一人きりで全部やり切ることではありません。

必要な支援やテクノロジー、周囲の人の力を上手に使いながら、自分の意思で自分の生活をかたちづくること。

日本語には「自立」と「自律」という2つの語がありますが、私が大切にしているのは、より「自律」に近い、自己決定と参加を支える実践です。

私が自立支援にこだわる理由
– 人としての尊厳に直結するから 誰かに決められた生活と、自分で選んだ生活は、同じ行動でも意味が違います。

朝の服を自分で選ぶ、通勤手段を自分で選ぶ、休憩のタイミングを自分で決める。

そうした小さな自己決定の積み重ねが、自己効力感と尊厳を支えます。

– 長期のQOL(生活の質)が向上するから 目の前の介助を増やすと短期的には安全で早いことがありますが、本人の力と選択肢を狭め、学習機会を奪うことがあります。

適切な練習と環境調整で「自分でできる」を増やすと、生活の満足度や地域参加が確実に広がります。

– 社会的包摂につながるから 「できること」が増える以上に、「役割」が増えることが大切です。

働く、地域で役割を持つ、趣味のサークルに通う。

自立支援は社会との接点を増やし、孤立から関係性へと橋を架けます。

– 支援の持続可能性を高めるから 支援者や家族の負担を減らし、限られた資源をより効果的に配分できます。

「任せる・待つ・見守る・道具を使う」ことは、現場の燃え尽きを防ぎ、本人の生活を安定させます。

– 学習性無力感を防ぐから なんでもやってもらう状況が続くと、「どうせ自分には無理だ」という気持ちが育ちます。

逆に、成功体験の設計と細かな評価で「やればできる」を積み上げると、挑戦の意欲が生まれます。

– 家族支援にもなるから 本人ができることが増えると家庭内の役割分担が変わり、家族関係がフラットになります。

介護一辺倒から、いっしょに暮らすパートナー関係へと移行できます。

– 社会正義の視点に合致するから 権利条約が示す「地域で当たり前に暮らす権利」を実現する道は、自立支援の積み重ね以外にありません。

保護から権利へ、隔離から共生へ。

この流れに実践で応える必要があります。

自立支援の具体像(私の捉え方)
– 自己決定の支援 選択肢の提示、視覚化、AAC(代替・拡大コミュニケーション)を使って意思を引き出す。

小さな選択から積み上げ、法律・医療・生活の大きな意思決定に繋げる。

– スキルの形成と環境調整 タスク分析、段階づけ、プロンプトとフェイディング、タイムエイド、チェックリスト、アプリやスイッチなどの補助具を活用。

– 役割づくりと参加 就労(特に支援つき雇用)、ボランティア、サークル活動、当事者研究やピアサポートへの参加。

– リスクと安全の両立 dignity of risk(リスクを引き受ける尊厳)と最小制限の原則。

危険をゼロにするのではなく、学べるリスクに分解し、ガードレールを付けて挑戦する。

– 伴走の姿勢 支援者は指導者ではなく伴走者。

できなかった理由を本人の能力ではなく環境や手順に求めて、調整する。

現場での小さな事例
– Aさん(自閉スペクトラム・知的障害) 通所先まで家族送迎でしたが、視覚的な地図、写真プロンプト、バス停の足跡マーク、ICカードケースの色分けなど環境調整を行い、段階的に一人乗車へ。

最初はスタッフが後方で同行し、週ごとに距離を離しました。

2カ月後には単独乗車を達成。

遅刻が減っただけでなく、「仕事の話」を自分からするようになりました。

– Bさん(身体障害・電動車いすユーザー) 転倒の不安から外出を避けていましたが、地域のカフェでのボランティアを週1回から開始。

店内の動線と段差解消、スタッフの声掛けスクリプトを整え、「一人でできる範囲」を少しずつ拡大。

半年後には接客を担当し、賃金が発生。

自己評価が上がり、生活リズムも安定。

– Cさん(強度行動障害) 叱責中心の対応を、ポジティブ行動支援に転換。

朝のルーティンを見える化し、好子(好ましい結果)を意図的に組み込む。

発作的な外出要求は、1日のスケジュール内で選べる「小外出」に置き換え。

問題行動が減り、衝動のコントロール感が上がりました。

根拠(エビデンス・制度・理論)
– 権利と制度の根拠 国連障害者権利条約(特に第12条・第19条)は、本人の法的能力の承認と地域生活の権利を明記。

日本では障害者基本法、障害者差別解消法、障害者総合支援法が、合理的配慮と地域生活の支援を位置づけています。

かつての「障害者自立支援法」という名称への批判はありつつ、支援の方向性としての自立(自律)支援は法制度の中核に残っています。

WHOのICFは、機能だけでなく「活動・参加」と環境因子を重視し、まさに自立支援の枠組みを支えています。

– 科学的根拠
– 自己決定とアウトカム 特別支援教育・成人期支援の領域で、自己決定スキル(目標設定、問題解決、自己評価)を高めた人は、就労・進学・生活満足度が有意に高まるという研究が蓄積(Wehmeyerらの研究群など)。

– 支援つき雇用(IPSなど) 統合失調症や発達障害を含む当事者で、一般就労の獲得・維持率が従来モデルより高く、QOLと回復感を高めるとする無作為化比較試験が複数存在。

– ポジティブ行動支援(PBS) 問題行動の機能分析と代替行動の形成は、行動頻度の低減と生活参加の増加にエビデンスが強い。

– 支援つき意思決定(SDM) 成年後見の代替として、意思表明の支援と「サポートの輪」を用いた意思決定は、本人満足度・権利侵害の軽減に寄与する報告が増加。

– 補助技術(AT) スマートフォン、スイッチ、視覚支援、タイムエイドは、時間管理・移動・コミュニケーションの自立度を統計的に改善。

– 地域生活とQOL 施設から地域移行した人は、選択肢の数、社会参加、満足度が向上するメタ分析がある一方、支援密度の最適化が重要だと示される。

– 心理学・倫理の理論
– 自己決定理論(Deci & Ryan) 自律性・有能感・関係性の3欲求が満たされると、内発的動機づけとウェルビーイングが高まる。

自立支援はこの3欲求を同時に扱う枠組み。

– 能力アプローチ(Sen/Nussbaum) 「何ができるか」という潜在能力と実際の機会へのアクセスを重視。

合理的配慮と環境整備は能力を実現可能にします。

– ノーマライゼーション/社会的役割の創出(Nirje/Wolfensberger) 当たり前の生活リズム・役割・価値ある役割の獲得が、スティグマの低減と自己概念の向上をもたらします。

– Dignity of risk・最小制限の原則 安全と機会のバランスをとる倫理基準。

実践上の工夫(私が大切にしていること)
– 目的を本人の言葉で定義する COPMやGASなどのツールで「本人にとって意味のある目標」を言語化し、数週間ごとに小さく評価。

– 選択の頻度を増やす 1日あたりの選択回数(何を、いつ、誰と、どこで)をカウントして増やす。

微小な選択でも効果は大きい。

– 手順を見える化する 写真・ピクトグラム・チェックリスト・タイマーで、記憶や注意機能に依存しない環境を作る。

– フェイディングの計画を先に作る 介助は最初から「減らす計画」をセットで導入。

支援が習慣化して依存を生まないようにする。

– サポートの輪を作る 家族、友人、ピア、専門職、雇用主をゆるやかに繋ぎ、意思決定や危機時の連絡網を明確にする。

– リスクは分解し、段階化する 危険な一歩を安全な十分の一歩に分け、確認ポイントと中止基準を合意する。

– 失敗の学習化 失敗は責めず、手順・環境・支援の調整点として扱う。

再挑戦の機会を意図的に設定する。

よくある誤解への答え
– 「自立支援は自己責任を押し付けないか?」 自立=支援からの独立ではありません。

必要な支援を適切に使い、自分の望む生活を送る力です。

責任は本人と支援者・社会の「共同責任」としてデザインします。

– 「重度の障害では自立は難しいのでは?」 自立の核心は意思の尊重です。

選択肢の提示方法、時間、コミュニケーション手段を工夫すれば、どんな重さでも自己決定の支援は可能です。

一日の小さな選択(服、音楽、座る場所)から始めます。

– 「安全を優先すべきでは?」 安全は大前提です。

ただ、過剰な安全は学ぶ機会を奪います。

学べるリスクと致命的リスクを区別し、後者は回避し、前者は緩衝材を用意して挑戦します。

最後に。

私が自立支援にこだわるのは、現場でそれが「人の表情を変える瞬間」を何度も見てきたからです。

自分で決めて、できたときの笑顔、失敗してももう一度やってみようとする眼差し、地域の誰かに名前で呼ばれる誇らしさ。

これらは単なる業務の成果ではなく、人として生きることの核心です。

法や理論やエビデンスも、最終的にはこの瞬間を支えるためにあります。

だから私は、今日も「できる・やってみたい・やってみよう」を一緒に増やす伴走者であり続けたい。

自立支援は終わりのない旅ですが、その一歩一歩が、その人の人生を確かに前に進めていくと信じています。

“自立”を本人らしさと両立させるために何を大切にしているのか?

私にとって“自立支援”は、「一人で全部できるようにすること」ではありません。

「その人がその人らしく選び、望む暮らしに近づけること」を、必要な支援や合理的配慮を組み合わせながら実現していく営みだと考えています。

だからこそ“自立”と“本人らしさ”を両立させるために大切にしているのは、本人の意思・好み・価値観を起点にして、環境や支援の側を調整することです。

以下、私が現場で重視していることと、その根拠をお伝えします。

自立の再定義 「一人でできる」より「自分で決める」

– 大切にしていること
「自立」を“完全に他者の手を借りない状態”ではなく、“自分の望みを表明し、意思決定できる状態(Supported decision-makingの下での自律)”に置き直します。

選択肢をわかりやすく提示し、意思表明の方法(言語・ジェスチャー・写真・ピクト・AACなど)を整えることを最優先します。

– 根拠
国連障害者権利条約(CRPD)は意思決定の支援と法的能力の尊重を強調しています。

日本でも「意思決定支援ガイドライン」(厚労省)が、本人意思の推定・表出支援・記録を基軸にした支援を求めています。

研究的にも、自己決定(Self-Determination)の度合いが就労・生活の質(QOL)向上に関連することが示されています。

「本人らしさ」を可視化するアセスメント

– 大切にしていること
ICF(国際生活機能分類)に沿って、機能だけでなく「活動」「参加」「環境因子」を系統的に把握します。

ライフヒストリー、強み、興味、苦手、価値観、日中のエネルギー配分、安心する条件、感覚特性などを丁寧に聴き取り、家族や仲間の語りも活用します。

「できていないこと」より「すでにうまくいっている場面」を手がかりにします。

– 根拠
強みベースのアプローチやポジティブ行動支援(PBS)は、問題行動の機能を理解し、環境調整と代替スキルの学習を通じてQOLを改善する実証的枠組みです。

ICFは個人要因だけでなく環境の影響を重視し、本人らしさを支える構成要素を特定するのに有効です。

環境とタスクの調整(合理的配慮とユニバーサルな設計)

– 大切にしていること
「人を変える前に環境を変える」を合言葉に、視覚的手がかり、音や光の調整、作業の分割(タスク分析)、道具の工夫、アプリやAT(Assistive Technology)の活用、スケジュールの見える化、休憩の質の設計などを行います。

支援の“フェードアウト”計画も最初から描き、必要最小限・最も制限の少ない支援に近づけます。

– 根拠
TEACCHや実行機能支援の研究は、構造化・視覚支援・タスク分析・プロンプトフェーディングが自立度とエラー低減に効果的であることを示しています。

合理的配慮は障害者差別解消法の根幹で、本人らしさを侵さず参加を可能にする実務的手段です。

リスクと尊厳の両立(Dignity of Risk)

– 大切にしていること
安全最優先が本人の挑戦する権利を奪わないよう、「危険の尊厳」を守ります。

リスクはゼロ化ではなく可視化・低減・共有。

ステップ化、先行体験、小さな失敗から学ぶ機会を設け、代替案やセーフティプラン(連絡先、リマインダー、位置情報の共有など)を一緒に作ります。

– 根拠
人権ベースの支援原則や社会的役割の valorization(SRV)は、リスク回避の過剰さが役割喪失や排除を生むことを指摘します。

支援の制限性を最小化することは倫理綱領にも位置付けられ、PBSや権利条約の実践指針でも推奨されています。

共同意思決定と家族・地域の巻き込み

– 大切にしていること
本人を中心に、家族、友人、就労先、医療・教育・福祉のチームで“共同製作(co-production)”します。

家族の希望と本人の希望がズレるときは、それぞれの不安と価値を言語化し、第三の案を探る対話を重ねます。

ピアサポートや地域の役割(サークル、自治会、ボランティア)を活かし、支援の“社会化”を進めます。

– 根拠
家族支援と共同意思決定は、長期的な生活維持とストレス軽減、目標達成を促すことが示されています。

ピアサポートはエンパワメントと定着率の向上に寄与することが多くの研究で報告されています。

目標設定は“本人の物語”から(GASやQOL指標の活用)

– 大切にしていること
KPIは“できる項目の数”ではなく、“本人にとって意味のある参加の質”。

目標はSMARTにしつつ、Goal Attainment Scaling(GAS)や本人満足度、QOL領域(自己決定・人間関係・物理的・心理的健康)で評価します。

小さな達成も可視化し、振り返りの場で本人の言葉を記録します。

– 根拠
人中心計画(Person-Centered Planning)は、本人関与の高い目標設定が生活の満足度とコミュニティ参加を改善することを示しています。

GASは個別性の高い目標達成を定量化できる実践的手法として妥当性が確認されています。

スキル形成は“教え方のデザイン”

– 大切にしていること
課題分析、順行/逆行連鎖、誤りのない学習、プロンプト階層、自然な強化子、一般化の設計を用います。

感情調整や自己 advocacy、ヘルスリテラシー、金銭管理、移動のスキルなど、生活に直結するスキルに焦点を当てます。

– 根拠
応用行動分析や実践研究は、系統的指導法が習得率と維持・般化を高めることを示しています。

自己決定スキル訓練は自己効力感と就労継続にプラスの効果があるとされます。

コミュニケーションアクセスの最優先

– 大切にしていること
発話に限らず、視覚、記号、デバイス、写真、選択式など多様な表出手段を整えます。

会議や説明は平易な言葉と短い文、絵や実物、タイムラインを用い、時間をかけて確認します。

– 根拠
AACの導入は行動問題の減少、選択場面の増加、参加の質向上に寄与することが多数報告されています。

権利条約は情報へのアクセシビリティ確保を義務付けています。

仕事と役割の重視(“作業”から“社会的役割”へ)

– 大切にしていること
作業訓練に偏らず、“誰かの役に立つ実感”や役割を持てる場を開拓します。

希望に沿った就労(一般就労や職場適応、ジョブコーチ、職務再設計)や、地域での役割(広報、清掃、販売、アート、スポーツの運営補助など)を一緒に探します。

– 根拠
IPS(個別配置就労支援)は、重度の障害を含む人の就労率・定着率を高めるエビデンスが確立しています。

社会的役割の獲得は自己肯定感と生活の質を強く押し上げます(SRV理論)。

トラウマ知識と文化的感受性

– 大切にしていること
過去の否定体験や感覚過敏、ジェンダー・文化背景を前提に、予測可能性と選択の余地を増やし、コントロール感を回復します。

本人のペースを尊重し、境界線(バウンダリー)を明確にします。

– 根拠
トラウマ・インフォームド・ケアは再トラウマ化を防ぎ、支援への信頼と参加を高めることが示されています。

文化的適合性は介入効果を左右する重要因子です。

現場の具体例
– 例1 一人暮らしを望む方
家族は反対。

私たちは週末の短期外泊から始め、見守りセンサー、服薬ボックス、近所の見守り、緊急連絡体制、火気の代替(IH)などでリスクを低減。

買い物リストの写真化と家事の手順書を整備し、1カ月ごとに振り返り。

半年後、週3日の単独泊に移行。

本人の満足度が高まり、家族の不安も数値的に低下しました。

– 例2 カフェで働きたい方
事業所は軽作業を提案していたが、職務再設計で「接客の前工程」(水出しコーヒー準備、テーブル拭き、トレー補充)を作り、視覚手順書とタイマー、ピクトで支援。

週2回の現場実習から雇用に至り、役割の獲得で自己表明が増えました。

支援者としての自戒
– “支援”が“管理”に変わらないよう、制限の必要性・相当性・最小性を常に検討し、記録と第三者のレビューを受ける。

– 本人の時間を尊重し、急かさない。

沈黙や迷いも意思の一部として扱う。

– 自分の価値観を押し付けない。

違和感を覚えたらチームで振り返る。

– バーンアウト予防にスーパービジョンとピア相談を活用し、学び続ける。

まとめると、“自立”と“本人らしさ”を両立させる鍵は、本人の意思を中心に据え、環境・支援・社会の側を柔らかく変えることです。

意思決定支援、人中心計画、合理的配慮、ポジティブ行動支援、尊厳あるリスク、共同製作という実践の積み重ねが、その人の「らしさ」を損なわずに生活の幅を広げます。

根拠は、権利条約や国内ガイドラインといった法・政策レベルの要請、そして自己決定・PBS・AAC・IPS・構造化支援・GASなどの実証的知見に支えられています。

最終的に指標となるのは、評価表の点数ではなく、本人の表情、語り、日々の参加がどれだけ“自分の物語”になっているか。

そこに立ち戻ることを、私は何より大切にしています。

現場でぶつかる壁やジレンマをどう乗り越えてきたのか?

私は「自立」を“ひとりで全部できること”ではなく、“自分の人生を自分のやり方で選び、必要な支えを自分で組み合わせて生きていける力”だと捉えています。

だからこそ現場では、本人の意思と安全、家族の希望、制度の限界、支援者の価値観がぶつかり、たくさんの壁やジレンマに向き合ってきました。

以下に、代表的な壁と、それをどう乗り越えてきたかを具体的にお伝えし、最後に根拠となる理論やガイドラインを示します。

現場でぶつかる主な壁・ジレンマ
– 安全と自己決定(“リスクの尊厳”)のせめぎ合い
例)一人暮らしを望む方に火気使用や薬の管理リスクがある。

支援者は事故を恐れがちだが、過度な禁止は自己決定を損なう。

– 本人・家族・支援者で「自立の定義」が違う
例)家族は「危ないから施設で安心を」、本人は「友人と暮らしたい」、支援者は「段階的に」。

価値観の相違で膠着する。

– 過度な支援による学習性無力感
できることまで代行してしまい、挑戦の機会が減る。

– 成果圧力と時間の制約
事業所の加算やサービス期間が、短期的な“できた”に偏らせ、長期の力づくりを圧迫する。

– 医療モデルと社会モデルのギャップ
症状の安定=生活の質とは限らない。

役割や関係性の回復が置き去りになる。

– 家族の過保護・罪悪感・燃え尽き
家族支援が同時に必要だが、同意形成に時間がかかる。

– 行動上の課題と抑制のジレンマ
問題行動への即時リスク管理と、長期的な機能的支援(環境調整・スキル学習)の両立。

– テクノロジーの見守りとプライバシー
常時見守りは安心だが、監視の感覚や当事者のストレスを生む。

乗り越え方(実践の工夫とプロセス)
1) 目標を“本人の言葉”で共創する
– パーソンセンタード・プランニングを用い、やさしい日本語、ピクトグラム、トーキングマット等で意思を可視化。

– SMART+GAS(ゴールアテインメントスケーリング)で段階目標を合意。

例)「3ヶ月で週2回、一人で最寄りスーパーに行ける。

買い物リストは視覚支援で。

」達成度を-2〜+2で評価。

2) リスクは分解し、小さく試す(段階的リスクテイキング)
– 危険をゼロにするのではなく、影響と発生確率を分析。

代替手段・安全策を段階導入。

例)料理ならIH化、火気は最初は職員同席→遠隔見守り→定期チェックへフェード。

薬は1回包装+タイマー通知→自己管理表→月1棚卸し。

3) 最小限の支援原則とプロンプト・フェーディング
– 口頭→ジェスチャー→視覚支援→環境提示へと支援の侵襲性を下げ、できたら速やかに手を引く。

– タスク分析で行程を細分化し、成功体験を連続させる。

4) 環境調整を先行させる(人の努力より環境を変える)
– 構造化(TEACCHの考え方)や視覚スケジュール、ラベリング、カラーマッチング、動線設計、ノイズ低減。

– 金銭管理は封筒分けやプリペイドカードで失敗コストを限定。

5) 行動は機能で理解する(PBS)
– 先行子—行動—結果の記録を取り、行動の機能(逃避、注目、感覚、要求)に沿って代替スキルを教える。

例)パニック→「休憩カードを提示」すれば離席できるよう合意し、成功したら強化。

6) 内発的動機づけを活かす
– 自律性・有能感・関係性が満たされる課題設計。

興味関心に合わせ役割付与(“店の仕入れ担当”“地域の花壇リーダー”)。

– 動機づけ面接で両価性を言語化し、本人の言葉で変化理由を引き出す。

7) 家族と“同じ地図”を描く
– 家族心理教育と情報共有。

リスクと予防策、合図、支援連絡網を可視化。

– 「見守りの質」を協議し、期待行動と境界線を明確化。

家族のレスパイトも同時に設計。

8) チームで支える多職種連携
– 相談支援専門員をハブに、医療、就労、学校、地域活動とPDCA。

ケース会議では短期指標(遅刻回数等)と長期指標(QOL、役割)を併置。

9) テクノロジーの“同意と透明性”
– スマホのリマインダー、位置情報、見守りセンサーは事前に目的・範囲・閲覧者を合意。

データは本人にも見える形で共有し、自主的調整を促す。

10) 支援者のリフレクションとスーパービジョン
– リフレクションノートで自分の価値観を可視化。

「安全のため」と言いながら本音は“自分が怖いだけ”だった、などに気づく。

– 倫理カンファレンスで“最も制限の少ない選択”を検討。

燃え尽き予防にピアサポートとセルフケア。

11) 役割と地域の接点づくり(SRV)
– “利用者”でなく“地域のメンバー”としての役割を設計。

ボランティア、サークル、当事者会、ピア就労。

– 就労はIPS型(職場優先・支援同伴)で早期に現場へ出て学ぶ。

12) 制度の活用と調整
– 障害者総合支援法の自立生活援助、就労移行・定着、合理的配慮、補装具・日常生活用具、障害年金等を組み合わせ、財源と人手の壁を下げる。

小さなケースのイメージ
– 金銭管理が苦手で万引き未遂があったAさん 買い物リストの視覚化、プリペイド上限、店員との合図、週1の家計振り返りを導入。

6ヶ月後に金銭トラブルゼロ、本人から「自分でやれた」実感の語り。

家族はレシート確認を週1にフェード。

– 一人暮らし希望で火の扱いが不安なBさん IHとキッチンタイマー、初期はビデオ通話での見守り→段階フェード。

万一に備え焦げ臭センサー。

3ヶ月で単独調理、来客にカレーをふるまう経験が自己効力感に繋がる。

– 職場での変更に弱いASDのCさん 業務手順の視覚化と変更時の予告、“困ったときカード”、上司への合理的配慮説明。

就労定着支援が月1面談。

遅刻が半減し、作業品質向上。

こうした介入は、“やってみてダメなら戻す”可逆性を前提に、小さく試し、データで確かめ、関係者で学び直す循環で回します。

成果が出ない時は、本人の価値(何が大事か)と環境の適合(PEOモデル)に立ち返り、目標そのものを調整します。

根拠・参照している理論やガイドライン
– 自己決定理論(Deci & Ryan) 自律性・有能感・関係性が満たされると内発的動機づけが高まり、継続行動が促進される。

自立支援の設計原理として有効。

– ポジティブ行動支援(PBS) 機能的アセスメントに基づく環境調整と代替スキル教示で挑戦的行動が減少することが体系的レビューで示されている。

日本でも実践が広がる。

– 構造化支援/視覚支援(TEACCH等) ASDの予測可能性を高め、不安と行動問題を抑える効果が報告されている。

– 動機づけ面接(MI) 両価性の解消と自己効力感の強化に有効。

依存や健康行動だけでなく就労・生活技術にも応用。

– IPS(Individual Placement and Support)就労支援 重い精神障害のある人の一般就労・定着率を有意に高めることが多数のRCTで示され、国内でも導入が進む。

– ゴール・アテインメント・スケーリング(GAS) リハビリ領域で個別目標の変化を捉える信頼性ある指標として国際的に活用。

– ICF(国際生活機能分類) 心身機能だけでなく活動・参加、環境因子を含めて目標を立て、環境調整を重視する枠組み。

– リカバリー志向・ストレングスモデル 強みと希望に基づく支援がエンゲージメントとQOLを高めるエビデンス。

– “リスクの尊厳”と最小制限の原則 UN障害者権利条約、国内の障害者差別解消法・合理的配慮の考えに合致。

厚労省の意思決定支援ガイドラインは、わかりやすい情報提供と選択機会の保障を求める。

– 家族心理教育 統合失調症領域のメタ分析で再発率低下が示され、家族支援の有効性が確立。

– 身体拘束ゼロへの取り組み・虐待防止ガイドライン 短期の安全よりも代替支援と環境改善を優先する考え方を明確化。

– データに基づくPDCA 記録とレビューでバイアスを減らし、介入の妥当性を検証するのは行動科学・QIC(品質改善)の標準。

最後に
自立支援は“できる・できない”の判定ではなく、“選べる・頼れる・学び続けられる”を増やすプロセスです。

壁やジレンマは避けられませんが、本人の価値を中心に、科学的根拠と倫理、そして小さな成功の積み重ねで越えていけます。

支援者の役割は、リスクをゼロにすることではなく、リスクを理解し、共有し、扱えるサイズにして、挑戦の門戸を開き続けること。

その先にあるのは、“ひとりで”ではなく“自分らしく”生きるための本当の自立だと考えています。

本人・家族・地域・多職種とどのように協働を築いているのか?

自立支援は「一人で何でもできるようにする」ことではなく、本人が望む暮らしを、必要な支えや技術・環境の工夫を使って実現していくプロセスです。

私たち現場の支援者は、本人・家族・地域・多職種を「対等な協働者」として結び、伴走しながら、意思決定・生活の選択・社会参加の機会を増やしていきます。

以下、協働のつくり方と、その背後にある根拠を具体的にお伝えします。

本人との協働の築き方

– 本人中心のアセスメントと目標設定
– 生活歴・価値観・得意不得意・支えになる環境を、ICF(国際生活機能分類)の視点で整理します。

障害名ではなく「何ができるか/どの環境ならできるか」に焦点を当てます。

– 目標は「自分の部屋で過ごす時間を増やしたい」「駅まで一人で行けるようになりたい」など、本人の言葉で具体化(SMART)し、短期ステップに分解。

本人のペースで小さな成功を積みます。

– 意思決定支援と権利擁護
– 選択肢の可視化(写真・ピクト・体験機会の設定)や、十分な時間、わかりやすい説明(やさしい日本語)で支え、最終判断は本人に委ねます。

失敗から学ぶ権利(dignity of risk)も尊重し、リスクは支援者側で予防策を用意します。

– 動機づけと行動変容の技法
– 動機づけ面接(MI)で「やりたい理由」を本人から引き出し、自己効力感を高めます。

– ポジティブ行動支援(PBS)で「うまくいく環境」を設計し、問題行動の代替となるスキルを教えます。

– テクノロジー・環境調整の活用
– スマホのリマインダー、視覚スケジュール、スイッチ、音声入力など支援技術(AT)を導入。

学校・職場・公共空間では合理的配慮を働きかけます。

– ピアとエンパワメント
– 当事者会・ピアサポートにつなぎ、ロールモデルから「できる未来」を具体化。

自己権利擁護のトレーニングで自分のニーズを伝えられるよう支えます。

家族との協働の築き方

– 目標の共有と役割の再設計
– 本人・家族・支援者で話し合い、短期(3カ月)・中期(1年)・長期(3年)の生活像を言語化。

家族の不安(安全・将来)を受け止めつつ、過保護に偏らない「見守る勇気」を一緒に育みます。

– 情報提供と心理教育
– 障害特性、コミュニケーションのコツ、危機時の対応、地域資源(レスパイト、日中活動、就労支援)を具体的に案内。

家族会につないで孤立を防ぎ、ケアラー負担を見える化して支援につなぎます。

– コミュニケーションの調整
– 本人と家族の目標がずれるときは、価値の洗い出し、合意できる「最小公倍数の目標」を設定。

境界線を尊重し、本人の意思を最優先しつつ、家族の安全懸念には段階的な試行と安全策で応えます。

– ライフプランと権利擁護の検討
– 住まい、就労、金銭管理、緊急連絡体制などライフプランを早期に設計。

必要に応じて地域の権利擁護や見守りの仕組みを活用します。

地域との協働の築き方

– 資源の見える化とアクセス支援
– 自治体の相談窓口、地域自立支援協議会、地域生活支援拠点、就労移行・継続支援、移動支援、文化・スポーツ団体などをマッピング。

同行支援で初回の心理的ハードルを下げます。

– 就労・学び・余暇の機会づくり
– 企業に合理的配慮を働きかけ、ジョブコーチと連携。

生涯学習・サークル・ボランティア参加をコーディネートし、「働く」「学ぶ」「遊ぶ」をバランスよく組み込みます。

– 普及啓発と環境づくり
– 学校・企業・商店街で障害理解研修や当事者講話を企画。

ユニバーサルデザインの街づくり、防災時の個別支援計画、移動のバリア解消を行政と進めます。

– 退院・施設から地域へ
– 地域移行支援・定着支援で、住まい探し、日中活動、医療フォロー、見守り体制をパッケージ化。

退院前から多職種と退院後プランを作り、空白期間をなくします。

多職種との協働の築き方

– チームの共通言語と目標
– 相談支援専門員、支援員、医師、看護師、OT・PT・ST、臨床心理、PSW、ジョブコーチ、学校、行政などで構成。

ICFを共通言語に、本人ゴールにひもづくKPI(例 週3回の通所、通勤ルート自立)を明確化。

– 情報共有と合意形成
– 本人の同意のもとで必要最小限の情報共有。

定例カンファレンス、記録の標準化、ICTの安全な活用。

意見の相違はエビデンスと本人の価値で調整します。

– トランジション支援
– 児童期→成人期、学校→就労、入院→地域などの節目に、プランを前倒しで作成し、同行・引継ぎ・並走期間を確保。

危機プラン(WRAPやセーフティプラン)も共有。

– リスクマネジメントと虐待防止
– 危険予測、緊急連絡体制、夜間対応の確認。

権利侵害の兆候にチームで早期対応。

本人の意思を核に、安全と自立のバランスを取ります。

協働づくりの実務プロセス

– 受理面接→包括的アセスメント→本人中心計画(サービス等利用計画・個別支援計画)→環境調整とスキル獲得支援→モニタリング→レビュー→目標再設定。

– 1~3カ月ごとに小さな成果を確認し、やり方を柔軟に微調整。

支援が「本人が自分でできる度合い」を上げる方向に働いているかを常に点検します。

成果の測り方(評価)

– 本人満足度・自己決定感、生活の質(QOL尺度)、社会参加の頻度、就労・学業の継続、課題行動の減少、入退院の安定、家族の負担感の軽減、地域のつながり数などを複合的に評価。

数値だけでなく、本人のナラティブ(実感)を重視します。

根拠(エビデンスと制度的裏づけ)

– ICF(WHO) 機能・活動・参加・環境因子を統合して評価し、環境調整と強みに基づく支援が効果的であることを示す国際枠組み。

– 国連障害者権利条約(CRPD) 本人の意思決定の尊重と支援付き意思決定の重要性、地域で暮らす権利を明記。

日本も批准し、合理的配慮の提供が社会の責務であることを確認。

– 厚生労働省の政策・ガイドライン 
– 障害者総合支援法、地域生活支援拠点等の整備、地域移行・定着支援、就労移行・継続支援、相談支援体制(計画相談・サービス等利用計画)。

– 障害者差別解消法(改正により民間事業者の合理的配慮が義務化)。

本人の社会参加を阻む障壁を取り除く根拠。

– 意思決定支援のガイドラインや強度行動障害支援の研修体系など、実務に関する指針。

– パーソンセンタード・プランニング(PCP)の効果 知的・発達障害領域で、選択機会と地域参加が増え、生活満足度が向上することが複数の研究で示されています。

– ポジティブ行動支援(PBS) 課題行動の機能を理解し、環境調整とスキル教授を組み合わせる介入は、行動問題の減少と生活の質向上に有効というエビデンスが蓄積。

– 動機づけ面接(MI) 多様な行動変容(服薬・生活習慣・依存など)で有効性を示すメタ分析があり、障害福祉の領域でも自己決定を支える技法として応用可能。

– 家族心理教育 統合失調症などで再発率の低下、服薬アドヒアランスの向上、家族負担の軽減をもたらすことが国際的ガイドラインやメタ分析で確認。

– ピアサポート 希望・エンパワメント・自己効力感の向上、入院日数の短縮などの効果が報告。

本人の語りが動機づけと自己決定を強く支える。

– IPS(個別就労支援)モデル 重度の精神障害があっても一般就労獲得が有意に高まることが国際的なランダム化比較試験・メタ分析で一貫して示されています。

就労は自立支援の重要な柱。

– CBR(地域に根ざしたリハビリテーション)ガイドライン(WHO) 医療・教育・生計・社会・エンパワメントの統合的アプローチが、地域包摂と自立に資することを示す実践指針。

現場で大切にしているマインド

– 「できない」ではなく「どうすればできるか」を一緒に探す。

– 本人の時間軸を尊重し、急がない。

小さな成功を喜び合う。

– 安全と自由のバランスを話し合いで決め、透明性を保つ。

– 連携は「人と人」。

肩書きでなく、互いの強みを持ち寄る。

– 支援が不要になることを目標に、常に「手放す設計」をする。

まとめ
自立支援は、本人の願いを中心に、家族の思い、地域の力、多職種の専門性を一つのストーリーに束ねる共同作業です。

エビデンスは「本人中心・強み志向・環境調整・ピア・就労重視・家族支援・多職種連携」の有効性を裏づけていますが、最も大切なのは、本人と顔を合わせ、生活の匂いがする現場で、一歩ずつ確かめながら進めること。

私たちは「その人らしい生活」を、科学と人の温かさの両輪で支えていきます。

これからの自立支援をどう描き、私たちに何ができるのか?

はじめに
「自立支援」は、できないことをできるように訓練することだけではありません。

本人が自分の人生を自分の言葉で選び、必要な支えを組み合わせて「自分らしく暮らす」ことを実現する、権利と関係性の実践です。

支援現場に立つと、日々の安全確保や業務の多忙さから、「目の前の課題解決」に収斂しがちです。

しかしこれからの自立支援は、本人の意思と選好を中心に据え、地域とテクノロジーを味方につけ、チームで「選択とコントロール(choice and control)」を広げていく方向に更新していく必要があります。

これからの自立支援のビジョン(7つの柱)
1) 権利基盤への転換
・障害の社会モデルと国際人権基準。

国連・障害者権利条約(CRPD)は、自己決定、地域で暮らす権利、合理的配慮を明確にしています。

日本でも障害者差別解消法の改正により、2024年から民間事業者の合理的配慮提供が義務化され、現場の背中を押しています。

自立=一人で全部やる、ではなく、自律(意思決定)と相互依存のデザインにシフトします。

リスクのある選択も尊重する「リスクの尊厳(dignity of risk)」が重要です。

・意思決定支援。

厚生労働省の「意思決定支援ガイドライン」は、情報提供の工夫、選択肢の見える化、信頼関係による推定意思の確認など、代替決定からの脱却を示しています。

支援者は結論を出す人ではなく、「決められる環境」を整える人に。

2) 生活全体を見通す支援
・ICF(WHOの国際生活機能分類)は、心身機能だけでなく活動・参加・環境因子の相互作用を見る枠組みです。

本人の生活上の目標(友人と外食に行きたい、通勤を一人でやってみたい、静かな住まいに移りたい)から逆算して、住まい、移動、コミュニケーション、健康、学び、働く、余暇の各要素を調整します。

・地域移行と地域定着。

入所・入院から地域での暮らしへ移ることは、QOLの向上や選択肢の拡大と関連しています。

グループホームから個室志向、24時間のパーソナルアシスタンス、重度訪問介護の活用など、「必要な介助があれば地域で暮らすのが当たり前」を実装します。

3) 個別化と共同設計(コ・プロダクション)
・パーソンセンタード・プランニング。

本人と家族、支援者、ピアが円卓を囲み、「何が大切か」「何が得意か」「何に困るか」を視覚化して合意形成し、本人の言葉で計画を記します。

目標は小刻みに、達成を見える化(例 Goal Attainment Scaling)。

・継続的な見直し。

状態や興味は変わります。

PDSA(計画・実行・評価・修正)で伴走し、計画相談・サービス等利用計画を「生きた文書」に。

4) ピアとコミュニティの力
・ピアサポートとセルフアドボカシー。

当事者同士の経験知は、希望、ロールモデル、具体的なコツをもたらします。

精神保健分野のリカバリー志向支援は、希望・意味・所属感を重視し、エビデンスも蓄積されています。

・地域共生。

自治体の地域福祉計画、包括支援、社会資源マップ化、ボランティア・NPOとの協働により、暮らしの選択肢を広げます。

防災・災害時要配慮者支援のネットワーク化も必須です。

5) テクノロジーとアクセシビリティ
・支援技術(AT)とICT。

スイッチや視線入力、AAC、読み上げ・字幕、予定可視化アプリ、行動記録、見守りIoT、スマートホーム、移動支援のオンデマンド交通、WCAG準拠のデジタルサービス、AIによる文章要約や代替入力など。

選択肢を広げ、介助の質を高め、家族の負担を軽減します。

・ユニバーサルデザインと認知アクセシビリティ(ISO 21801)。

表示のわかりやすさ、騒音や匂いの配慮、案内の一貫性など、環境側の改善は多くの人に効きます。

6) 働くのアップデート
・支援付き就労のエビデンス。

IPS(Individual Placement and Support)は、一般就労への直接的な就職支援、迅速な職探し、個別化、継続支援を柱とし、国際的に最も強い効果が示されています。

日本のジョブコーチ支援や障害者雇用促進法の枠組みと組み合わせ、合理的配慮と職務再設計(ジョブカービング、ジョブクラフティング)を進めます。

・多様な働き方。

テレワーク、短時間・フレックスタイム、在宅ワーク、特例子会社から本社現場へのインクルージョン、マイクロ起業や地域での役割づくりを柔軟に。

7) 人と組織が学び続ける仕組み
・エビデンスに基づく実践(EBP)とスーパービジョン。

ポジティブ行動支援(PBS)やトラウマインフォームドケア、強度行動障害支援研修などを実装し、チームで振り返り。

バーンアウト予防、倫理カンファレンス、苦情対応・虐待防止の仕組みも柱です。

・データで支援をチューニング。

小さな指標(外出回数、選択機会の数、本人満足度、家族の負担感、入退院・事故の減少など)を定点観測し、本人の語りと合わせて改善します。

私たちにできること(立場別アクション)
・支援スタッフ
1. まず本人に聞く。

ゴール設定を本人の言葉で。

写真・絵・具体物・簡易言語で選択肢を見える化。

2. 環境を整える。

静穏な空間、分かりやすいサイン、スケジュールの可視化、アシスティブ機器の試用。

3. 小さな成功を積む。

段階づけ、プロンプトのフェード、一般化の支援。

失敗を経験学習へ。

4. ピアや家族を巻き込む。

定例の円卓ミーティングで合意形成。

5. 記録は「結果」だけでなく「選択機会」と「本人の声」を。

GASなどで見える化。

6. トラウマに配慮。

安心・予測可能性・選択肢・協働・エンパワメントを意識。

7. 自分を守る。

感情労働のケア、チームの相互支援、スーパービジョンの活用。

・管理者・事業所
1. パーソンセンタードを軸に業務設計。

シフトに「選択の時間」を組み込む。

2. 研修とコーチングの投資。

IPS、PBS、意思決定支援、AAC、ICT、虐待防止。

3. 合理的配慮の社内標準化。

マニュアルよりガイドラインと裁量の両立。

4. データと物語で改善。

小さなKPIとストーリーで質改善を回す。

5. 地域連携。

学校、医療、企業、自治体、NPOと連携協定。

災害時の相互支援体制も。

・家族
1. 本人の代理ではなく伴走者に。

意向の翻訳者として支援者と協働。

2. レスパイトの活用。

家族の休息は長期的な自立支援の基盤。

3. ピア家族会で学ぶ・分かち合う。

権利と制度のアップデートにアクセス。

・当事者
1. セルフアドボカシーの機会に参加。

自分のやりたいことを言語化・可視化。

2. ピアとして他者を支援。

経験知を価値に変える。

3. テクノロジーに触れてみる。

自分に合うツールを試す権利があります。

・企業
1. 採用からオンボーディングまで合理的配慮をデザイン。

ジョブコーチ連携。

2. 職務再設計とアクセシブルな職場環境。

WCAG準拠、照明・騒音・通路の配慮。

3. 人事評価の更新。

成果の出し方の多様性を認める。

・行政・学校・地域
1. 地域移行・定着支援の拡充、医療的ケア児支援、移動支援、文化・スポーツの包摂。

2. インクルーシブ教育と移行支援(就学・就労・地域移行)。

合理的配慮の仕組み化。

3. 防災計画に要配慮者支援を組み込み、平時から顔の見える関係を。

小さなケースの風景
外出が苦手で日中活動に参加できなかったAさん。

本人の目標は「近所の喫茶店で一人でコーヒーを頼む」。

スタッフは時間帯を朝の静かな時間に変更し、写真付きメニューと店までの動画マップを一緒に作成。

初回はピアが隣で見守り、二回目は店の外で待機、三回目は入口までの同行にフェード。

店には合理的配慮として席の予約と混雑の見える化を依頼。

1カ月後、Aさんは自分の言葉(指差しカード)で注文できるようになり、外出頻度が週3回に増え、日中活動への参加も安定しました。

これは「できることを増やす」だけでなく「選べる場面を増やす」支援の成果です。

根拠(主なエビデンスと制度)
・権利と法制度
– 国連障害者権利条約(CRPD) 自己決定、地域生活、合理的配慮、支援付き意思決定の方向性を明記。

– 障害者差別解消法(日本、改正施行2024) 民間事業者の合理的配慮の義務化。

– 障害者総合支援法、児童福祉法、医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律 地域生活支援の枠組み。

– 厚生労働省「意思決定支援ガイドライン」 本人中心の意思決定プロセスを提示。

・評価枠組み
– WHO ICF 生活機能、活動、参加、環境因子の統合モデル。

自立を環境調整とセットで捉える根拠。

– パーソンセンタード・プランニングとGAS 個別目標の達成度評価に有効(実践研究多数)。

・就労支援
– IPSの効果 ランダム化試験やシステマティックレビューで、一般就労獲得率・継続率が従来型より高いことが一貫して示される(Bondらのレビューなど)。

日本でもIPSの原則を取り入れた支援が拡大中。

– 合理的配慮と職務再設計 職務の再編成が雇用継続と生産性向上に寄与する研究が蓄積。

・行動支援と生活の質
– ポジティブ行動支援(PBS) 強度行動障害への包括的支援として、行動の機能理解、環境調整、スキルトレーニング、家族・スタッフ研修を組み合わせるアプローチ。

国際的に効果のレビューあり。

英国NICEも推奨。

– 地域移行の効果 脱施設化は生活満足、選択の拡大、社会参加の増加と関連する研究が多い(欧米の縦断研究)。

・意思決定支援
– 支援付き意思決定(Supported Decision-Making) カナダ、オーストラリア等で導入。

本人の自己効力感や参加の増加が報告され、成年後見の代替として国連も推奨。

日本でも試行事業やガイドラインが整備。

・テクノロジー
– AACの有効性 語用・参加の増加がメタ分析で示される(Light & McNaughtonらの研究など)。

– デジタルアクセシビリティ W3C WCAG 2.xに基づく改善が情報アクセスと就学・就労機会を広げる。

ISO 21801が認知アクセシビリティの設計指針を提供。

・メンタルヘルスとピア
– リカバリー志向支援・ピアサポート 希望・自己決定・コミュニティ参加が回復指標の改善に関連する実証が増加。

リスクと倫理への配慮
・過度な安全志向は選択の機会を奪いがち。

安全と自由のバランスをチームで可視化し、段階的にリスクを取る。

・テクノロジーの導入は同意とプライバシー保護が前提。

データは目的外利用を避け、本人に説明可能な形で管理。

・意思決定支援は「説得」ではない。

選択肢の提示と理解可能な説明、第三者のチェック機能を用意。

成果をどう測るか(例)
・本人報告の満足度、選択機会の数、地域参加の回数・多様性、望まない行動の減少、入退院の減少、就労・就学の継続、家族の負担感の軽減、支援者のバーンアウト指標の改善。

数値だけでなく、本人のストーリーを記録することが重要です。

おわりに
自立支援は、訓練や制度の話にとどまりません。

本人の「こう生きたい」という言葉を起点に、環境を調整し、仲間と学び、テクノロジーを取り入れ、地域を巻き込みながら、選択と参加の半径を一歩ずつ広げる営みです。

根拠は国際条約と日本の法制度、エビデンスのある実践が支えています。

今日からできる最初の一歩は、次の面談で「あなたにとって大事なことは何ですか?」と尋ね、その答えをチームで形にすることです。

私たちが変われば、支援は変わり、暮らしは変わります。

【要約】